とにかく、気を付けよう。

そんなことを考えながらドアを開けた。

中に入って、ドアを閉めて、自分の机に向かって歩く。

(かばん)を置くと、教室が静かになった。

......どうしよ、さっきから静かだ。

不安になって、あたりをきょろきょろすると、



「彩葉っ、おは~」

「おーす」



聞きなれた声が聞こえてきた。



「志亜、輝星(こうせい)、おはよ」



二人が挨拶してくれたことに安心して、わたしも挨拶を返す。

珠山(しゅやま) 志亜と幸崎(こうざき) 輝星は、わたしの幼馴染。



「なんか困ったこと、なかった~?」

「あったよ」

「…は⁉」

「何があったの⁉」



返事をすると、嚙みつくように言われてちょっとあせった。



「でも、助けてもらったよ!」

「よかった、なにで困ってたの?」

「靴がしまえなくて......」

「......」

「心配してくれて、ありがとうっ」



小さく笑って言うと、志亜が額をおさえた。



「可愛すぎ......。男子が夢中になるのもわかるわ」

「なんて?」