反射的に返事をしてしまって、少し後悔した。

っていうか、初対面の人に向かって、何してんのわたし!

し、失礼すぎるよ......っ。

お、お礼しないと......。
 


「っあ、あの......っ。ありがとう、ございました......」

「ん? 気にしないで?」



にこり、と笑っている男の人。

見えないけれど、声でわかる。

向きも、あってそう。違う方向見てたら、失礼すぎるからね!



「あの、名前は......? お礼したくて......」

「名前? 裏信(うらしな) (そら)。お礼なんていーよ」

「でも、そういうわけには......」

「じゃねっ」

「えっ......ちょ、まっ......」


思わず引き留めたけど、彼......裏信さんは風のように軽やかに行ってしまった。

先輩、かな、高校三年生くらい?

彼がとてもやさしい人だということを感じながら、上履きに履き替えて教室までの道を歩いた。

 

  ✦゜

  .゜

 

教室から楽しそうな声がもれだしている。

教室につき、ドアに手をかけた。

またイヤリングさんに頼りっぱなしになっちゃった......。

イヤリングさんも、状況を把握(はあく)するの大変だと思うし......。

イヤリングさんに、迷惑をかけたことを反省した。

って、これ、おかしいかな......。