まだ朝の挨拶をしてなかったことに気づいて、おわびにらむの頭を少しかがんでなでた。

その時、ヴヴっと耳元からノイズ……機械音がした。



『信号が青になります。』

「ありがと、教えてくれて」



左耳につけたイヤリングに返事をする。

その直後に、信号が青になったよと合図の音がした。

左耳についてるイヤリングは、わたしのためにある人がくれたもの。

このイヤリングは、現代技術を詰め込んだような感じで、AI(エーアイ)みたいにわたしに必要なことを教えてくれるんだ。

耳に引っ掛ける部分はシルバーでできてて、しずく型……AIみたいな技術が詰め込まれてる……ところは透き通るような赤色なんだって。

赤……いや、朱色……? ちょっとオレンジっぽいのも……。

いや、やっぱり赤だと思う。

見たことないけど、とってもきれいなんだって。

志亜(しあ)がそう言ってた。

デザインがかわいくて、便利だから……大事にしてる。

って、信号が赤になっちゃう……っ。

わたしは少し早歩きで横断歩道を渡った。

見えなくたって、……見えなくたって、何の害もないし……。

わたしの目に、何も映らないことにただ、むなしくなった。