「......勉強、してるの?」
「............え」
どれくらい、そこにいたのか。
気が付いたら、先輩は、私の隣に座っていた。
かすかな呼吸音が聞こえて、気配がする。
私はイヤホンを外して、先輩を見た。
「先輩、どうして......」
「彩葉は、いそうな気がしたから」
そう言って、彼はノートを覗き込んでいるのが分かった。
「きれいな字だね」
「えっ、あ......初めていわれます」
「そう?」
なぜ目が見えないのに文字を書いているのか。
じゃないと、筆記テストに受からないからだ。
問題文を読み上げられて、出された紙の記入をしていく。
全部が全部同じ紙だったら、どこに書けばいいかわからない。
だから、つづりとか、英語だったら四線とか、国語だったら中心とかを気をつけなきゃいけない。
目は見えないから意味はないと思うけど、書いてないと書き方を忘れちゃうから......。
「彩葉は、テスト前にガッてやるタイプじゃなくて、コツコツやるタイプ?」
「はい。ガってやったら、時間が足りなくなっちゃって......」
短期決戦派だった私。
でもそんなことをしていると、テストには間に合わないと中学の時に学んだ。
「短期決戦派から長期戦派になったんですよ」

