借りても、読めなかったから、読んでもらっていた。

見えなくても、聞き取ることはできるから。



「そうなんだね」

「その、先輩は......どんな本を探しに?」

「勉強」



ほら、俺ってさ、ちょうど高3でしょ? 受験とかのさ勉強しとかないと、と先輩は言って。


そっか、先輩、高3なんだ。
じゃあ、大学受験が近づいてるのか。

ふんふん、と理解する。



「ところで、あのネコちゃんは? 外にいるんだよね?」

「はい、図書館内だと禁止みたいなので」

「勝手にいなくなっちゃったり、しない?」

「多分、大丈夫です」



らむは、勝手に迷子になったりしない。

......多分。



「俺は、自分の見てくるから。帰りたかったら、帰っててもいいよ」



そんな声を聴きながら、先輩の気配が遠のくのが分かった。



「私も、......勉強、しよ」



つぶやいて、椅子を引く。

カバンからノートと参考書、教科書を取り出した。