「......彩葉、こういうこと、ほかの男にはすんなよ。ていうか女もダメ」

「は、はぁ......」



どういうこと?

こういうこと、って、飲み物あげること?

なんでしちゃダメなんだろ? 



「あんた、そんなこと言っても、彩葉が混乱するだけよ」

「......」

「ああ、嫉妬? あーもー、この男、はやんない要素が多すぎるわ」



好きな女の子には、それじゃあもてないわよ、と志亜が言う。

はあ、と大きなため息をついた志亜に、輝星がくいかかる。



「うっせーんだよ!」

「あーはいはい、おかわいそうに。言語が分からないのね」

「なっ......!」

「お、落ち着いて......ほら、休憩休憩っ、次の授業っ、美術だよ」

「まーいーの!」

「ほら、彩葉が困ってんだろ、バカ女」

「輝星、バカ女とか、志亜に言っちゃだめだからっ......」



慌てて反発し始めた二人をたしなめる。

次の授業は美術。



「遅れちゃうよ」

「別にちょっとくらいは、」

「美術の先生、野小山(のこやま)先生になったんだよ......?
 遅れたら、すっごい怒られるよ。みんなの前で、ねちねち言われるよ......?」

「......」

「......急ぎましょ、彩葉っ」

「走れえーっ!」