書店に向かう最中、2人は話に花を咲かせていると、芸能科の生徒が普段利用している西門の前を通り過ぎた。



ーーと、次の瞬間。



硬いものがガタガタと揺さぶられるような音と共に、騒がしい男の子の声が背後から耳に飛び込んできた。



「じゃー、次はユウセイが鬼ね。俺は逃げる役をやるから」

「鬼無理ーっ。お前がまた鬼をやれよ。俺が先に走るから」



小学校から帰り道、遊びの延長線上でふざけ合っている男の子の声は、走る音と共に紗南達の方へと距離を縮める。

一方、一橋との話に夢中な紗南は、男の子達の事など気にも止めずにいた。


ところが、よそ見をして走っていた男の子のうちの1人が紗南の背中へと勢いよく衝突。


ドンっ…



「きゃっ……」



その衝撃で紗南の学生カバンが手から外れてしまい、一車線道路の中央へと放り出された。


男の子は道路中央に放り出されたカバンを見た瞬間、まずいと思い反省の色を伺わせて頭を下げた。



「お姉さん、ごめんなさい」

「ううん、大丈夫だよ。でも、道を歩く時は左右をよく見て十分に気をつけてね」


「はぁ〜い」



低学年くらいの男の子からは、まるで模範生徒のような返事が届く。

紗南は仕方ないなといった表情で、放り出されてしまったカバンを取りに道路の中央へと向かった。