しかし、珍しく街に大雪が降ったある日。
朝から熱っぽくて保健室に向かうと、久しぶり窓際のカーテンが閉まっていた。
そこでベッドには彼がいる事が判明する。

彼は私がベッドに横になった事を知ると、出会った当初に話した皆川くんとの思い出話を引っ張り出してきた。

正直いい気がしなかった。
今はセイくんに心惹かれていたから、想いが引き剥がされていくような気がしてならなかった。



『もう10センチ近くも雪が積もっているから、今日はひょっとしたらあんたが会いたい人に会えるんじゃない?』



いま私が会いたいのは大雪の日に再会の約束をしていた皆川くんではなくて、カーテン越しに久々の再会をしたセイくん。
彼は私が想いを寄せている事なども知らずに話を次々と進めた。

だから、皆川くんとの再会に期待を持たせるような言葉が少しばかし窮屈に思えた。



『どうかな。あれからもう6年も経ってるし、あの時に彼と待ち合わせ場所とか細かい事を決めなかったから、多分会えないよ』



可愛げのない返事を届けると、彼は急に咳き込んでいつもの星型の飴が欲しいとねだった。
私はカーテンの下から手を伸ばす彼に飴を手渡すと、彼は飴ではなくて私の手を包み込むように握りしめて。



『もう会えたよ』



ーーこうして、彼は自分が皆川くん本人だとカミングアウトした。
そして、私達は6年越しの想いが繋がって恋人に。


超人気歌手の彼氏を持てて自慢かって?

……ううん、そうは思わない。
彼はファンの宝物。
だから、恋人でいても独占出来ないと思ってる。