お互い幸せじゃなきゃ意味がない。
彼の為にと思って譲ってばかりいちゃダメなんだ。


だから私は、彼が目の前にいる今この瞬間から新しい自分に生まれ変わるんだ。



「はい……」



紗南は再び涙ぐませコクンと頷いた。



本物の想いがお互いの心に届いた瞬間…。
2人の気持ちは1つになる。

私は弱気な自分を捨てて、彼が隣に居る未来を選択した。






すると、セイは紗南の両頬に両手を添え、キスをしようと顔をゆっくり近付けた。


紗南にとっては初めてのキス。
期待と緊張で胸をドキドキさせてゆっくりと目を閉じる。








もう、迷わないし。
もう、失敗しない。

私は自分の人生を犠牲にするのを辞めた。
真の幸せをこの手で掴み取る為に。



恋人として復活したばかりなのに、いきなり同棲を決めるなんて自分でも驚いている。



彼の職業は歌手。
私は医師を目指す大学生。


お互い生活スタイルが違うし、彼はどんな食べ物が好きなのか、休みはどうやって過ごしているのか、どんな趣味を持ってるかはまだ知らない。



でも、きっと一緒に暮らしてるうちに少しずつ分かり合えていく。
お互い意見をぶつけ合い、そして時にはケンカをしながら仲良く生活していけばいい。

どんなに辛い事があっても、彼が隣に居てくれれば乗り越えられそうな気がする。





きっと、両親は同棲に反対するだろう。


結婚ではなく同棲。
恋人が結婚の約束もせぬまま、ただ一緒に暮らす。
しかも、彼と結婚出来るかどうかもわからないという中途半端な立ち位置にある。



まだ学生の身なのにとか、一人娘だからとか、両親は何らかの理由を被せて反対するかもしれないけど。



でも、私は決めた。
これからは自分の人生は自分で決めていく。



もし、同棲を反対されたら、逃げずに諦めずにゆっくり話し合っていけばいい。
彼を愛しているから、一緒に暮らしたいと伝えようか。


面と向かって話し合えば、きっとわかってもらえる。
話し合う事の大切さを彼が教えてくれた。

だから、これからどんな困難が押し寄せてきても、私はもう逃げない。