「俺も紗南が好きだよ」



セイはそう言い、紗南の右手を引いて胸の中で抱き止めた。




抱きしめる力強さ。
じんわり伝わる温もり。
絡み合うお互いの香り。

1つ1つ彼の傍に居る実感を噛み締めていると、何とも言えぬ高揚感が押し寄せてきた。



赤面している紗南も、セイの背中に手を回しギュッと力を込める。




私……、幸せ。
ずっとこのままで居たいって本気で思った。




待ち望んでいた幸せな瞬間。
全身から好きが溢れ過ぎて、今にも気を失いそう。



「俺がここまで頑張って来れたのは、全部お前のお陰。別れる前に、『留学頑張って』ってエールを送ってくれたから」

「応援の言葉を覚えててくれたんだ」


「お前の言葉は全部宝物だから」

「あははっ、セイくんったら大袈裟だね」


「もし、お前が言うように俺が一等星だとしたら、天気が悪くて空が曇っていても、打ち上げ花火の残煙で夜空がよく見えない日でも、忙しくて夜空を見上げる事が出来なくても、無数の星に負けないくらい光を強く放っていたのは、夜空を見上げて一等星を探している、人一倍泣き虫な女の子に自分を探して欲しかったから」

「それって…、私?」


「そう。一等星は、いつも見守り続けているお前に探してもらえなきゃ、光を強く放っても意味がないから」



私達は星を例えにしてついこの前の距離感を語った。

夜空一面に広がる無数の星は一見手に届きそうに思えたりするけど、実際は遥か彼方。


でも、お互いがお互いの居場所をしっかり確認する事が出来たら、私達はもっともっと強くなれるんじゃないかなって。









しかし、喜びに浸るのも束の間。

セイは急に落ち着いた低い口調で紗南の耳元で小さく囁いた。



「………でも、この先は地獄だよ」

「えっ……」



紗南は幸せを噛み締めていた矢先、我が耳を疑いたくなるセリフを耳にすると、セイから少し距離を取った。