「セイくん…。本当に……久しぶり………」

「……だな」



視線を合わせたセイは急に鼻声に。



セイくんから届けられる恋する瞳に、思わず胸がキュンと高鳴る。
この瞬間は、長く苦しんだ時間も忘れてしまうほど幸せに満ち溢れている。



「境界線っていうのは、簡単に乗り越えちゃいけないんだよ」

「わかってる。でも、あの時はお前に会って話がしたかった。だから、境界線を越えた事は後悔してない」


「留学を後押しする為に別れを告げたのに……。セイくんったら私の気持ちを簡単に無視するんだもん」

「だって、別れる気がなかったから」


「お陰で今日までずっと苦しかったんだから」

「じゃあ、俺が今この瞬間からお前の苦しみを全て受け止める」


「……っ」



顎に向かって一直線に流れ落ちる紗南の涙は、まるでダイヤモンドのように光り輝いている。

紗南に届けられたセイの本音は、まるで鋭利な矢先でハートの的を射抜くかのよう。



ずっと待ち望んでいた返事が素直に受け取れる段階に達したら、もう我慢する必要がなくなった。

彼の為にと思って握り続けてきたブレーキハンドルは、もう強く握りしめる必要がないのだから。