感動的な気分が少し落ち着き場の空気が和んでくると、セイから少し照れ臭そうな声が届いた。



「俺さぁ、『ヤバイな』『聞いちゃいけないな』って思っていたけどカミングアウトするわ」

「……え、何の話?」


「さっき、お前と杉田先生との会話を全部聞いちゃったんだ。あはは、ごめん……」

「へっ?!」


「聞き耳を立てるつもりはなかったんだけど…。お前ってさ…、俺の一番のファンだったんだな」

「あっ……、そ…それは……」


「しかも、さっき『飴が食べたい』って言ったら、カバンの中からすんなり飴が出て来たし」

「あ…飴がカバンの中に入っていたのは……、ぐ…偶然かな」



セイには有利な展開が訪れるが、紗南には非常に不都合な展開が訪れる。



セイくんに会ったらいつでも飴が渡せるように、毎日持ち歩いてるって。
セイくんとの思い出を大事にしているから、いつも飴を舐めてるって。
セイくんと再会したら、勇気を出して告白出来るように、毎日少しずつ勇気を補充していたって。

可愛く素直に言えばいいのに。


もう。
私の意気地なし!



「それはどうかな~?それと、冴木さんって、昔は結構大胆だったんだな。侵入事件を起こした後、俺と同じく校長室に呼ばれてこっ酷く叱られたんだろうな。ははっ…。かっけぇ~」



気分が上々のセイは調子が乗っていく一方。

だが、先ほど延々と養護教諭に心内を語って知らぬ間に本心を曝け出していた紗南は、もう逃げも隠れも出来ない。