すると、養護教諭はフッと砕けたように笑った。
「似てる…」
「……え、私?誰に似てるんですか?」
「誰にも歓迎してもらえない恋に、ただひたすら奇跡を願っていたある女子生徒にね」
養護教諭は、自分と似たような境遇と思われる女子生徒の話を語り始めた。
「その私に似てる生徒さんは、一体どんな人だったんですか?」
「⋯⋯ねぇ、福嶋さんはセイのマネージャーの冴木さんを知ってるわよね。以前、貴方達が喋っている姿を見た事があったから」
「あ……、はい。勿論知ってますけど」
「じゃあ話は早いわね。福嶋さんは彼女とそっくり」
「えっ!何処がですか?容姿も性格も全く違うのに⋯」
紗南の頭の中には、『セイに近付くな』と目をつり上げている冴木の姿が思い浮かぶ。
冴木と言ったら、冷静沈着でデキる女のレッテルを貼っていた。
「12年前、彼女は本校の普通科に在籍していたの。星マークの上履きの彼のように、芸能科の校舎に侵入して問題を起こした事があってね」
養護教諭は、大雪の中セイを探しに来た紗南の為に思い出話を始めた。
新任だった当時の記憶が蘇ると、保健室で失神してしまいそうなほど嗚咽を繰り返していた冴木の姿と、いま目の前で落胆している紗南の姿が不思議と重なって見えた。