「福嶋さん……」

「ダンス留学は彼の夢でした。憧れの人からダンスを教えてもらえるなんて、なかなか機会が訪れないですよね。……でも、夢が叶いそうな瞬間に私が彼の足かせになってしまったんです。だから、敢えて突き放したんです」


「⋯⋯辛かったでしょう」

「本当は離れたくなかった。あの時は、味わった事がないほど胸が痛んで…」


「可哀想に…」

「そしたら、彼は危険を冒してまで東校舎の私の元へ会いに来たんです」


「2年前の侵入騒ぎの日ね。あの日は職員室が大荒れだったから、今でもしっかり覚えてる」

「結局、彼の将来を思って会いませんでした。……でも、あの日は彼が初めて『好きだ』と言ってくれたのに、私は彼に一度も好きだと伝えられませんでした。それが、2年経った今でも心残りで…」



好きな人を諦めるのは簡単じゃない。
長い歳月が過ぎても、忘れるどころか会いたい気持ちは募っていくばかりだった。