熱狂的に湧いていた街は、長い月日と共に静寂を取り戻していた。
音楽業界では新人歌手のデビューが相次ぐ。

だが、KGKの人気を越すほどの歌手は未だに現れない。




彼がいつ日本に帰国するかわからないから、情報を収集する為に忙しい合間を縫って音楽番組を観るようになった。

でも、彼が出演していない番組を見る度に、心の中はひと気のない遊園地のように、虚しさの嵐が吹き荒れていた。





気付けば汗ばむ陽気が続き、半袖の季節が到来。

南から吹き付けてくる夏風は、靡いた髪が頬にピシャリと勢いよく叩きつける。

それは、移りゆく季節の中、長々と恋を引きずっている自分に、一刻でも早く目を覚ませと言わんばかりに……。





もし、2年後にもう一度彼に会う事が出来たら、どうしても伝えたい事がある。
一度も気持ちを伝えなかったあの時のように、もう二度と後悔したくないから。



でも、彼が日本に帰国してもきっとその夢は叶わない。
何故なら彼を突き放して傷付けてしまったのは、この私だから。