ーー午後18時35分。

場所は紗南の部屋。
今は家庭教師の一橋から英語を教わっている最中。

本来の予定なら授業は19時で終了。



英文をノートに書き綴る紗南だが、今日はいつもと比べるとペンの進みが悪く、時たま深いため息を漏らしている。

一橋はそんな紗南の異変に気付いた。



「少し疲れてるように見えるけど平気?」

「……平気です」



紗南はセイが夜便で出国するのがわかっている分、気が気ではいられない。



最低でも2年間顔を見る事が出来ない。
関係は途絶えてしまったけど、彼を想う気持ちは平行線だ。



こんなに頭を悩ませるくらいなら、遠目からでもいいから空港に見送りに行けばよかったかな。
でも、運悪く冴木さんに遭遇してしまったらと思うと⋯。



傷心するあまり精神的に不安定な紗南は、なかなかセイへの諦めがつかない。