冴木は女の武器とされる涙をポロポロと流した。



「君だけ特例を許す訳にはいかないんだ。わかってくれ」

「停学になっても構わないから、彼のところに行かせて下さい…。たった一度だけでいいんです」


「冴木。もしかして、恋愛沙汰でこんな騒ぎを起こしているのか?」

「……」



我が校は男女交際禁止。
“ 彼 ”というキーワードに引っかかると、学年主任は鋭い目をより光らせる。



「恋愛以前に自分の立場を弁えろ。お前以外の生徒は、みんなルールに従っているんだ」



どんなに必死にお願いしても、教師達は正論ばかりを並べて私を東校舎に戻す事しか考えていない。
私の想いなど蚊帳の外。



でも、私にとっては一生に一度きりの大勝負。
彼と話をしたら素直に教室に戻るつもりでいるのに…。

今は大々的に迷惑をかけてしまっているが、勿論これ以上大ごとにするつもりはない。