先ほど職員室で最後の挨拶を終えたばかりの2人だが、再び職員室に足を踏み入れると、この時間に担当を受け持っていない教職員達の目が止まった。

だが、芸能科の生徒という事もあり、特に監視の目を強めていない。

これがもし普通科の生徒だったら、真逆の対応をされていただろう。



一方、セイの暴走を止めるのは自分しかいないという重大な責任感を背負っているジュンは、教職員に不自然な様子を気づかれぬよう、そそくさとセイの後ろを歩いた。


2人の足が職員室から離れた瞬間、ジュンはスイッチを切り替えたように、再び説得に回った。



「考え直せよ。普通科の生徒はお前がここに通っている事を知らないんだ。お前が芸能科の生徒とバレるだけで学校中の騒ぎになるぞ」

「そんなの知ったこっちゃない」


「しかも、今は3時間目の授業中だろ?お前が東校舎で何かをしでかしたら、校内でパニックが起こるだろ」



セイはしつこく追い回すジュンを厄介に思い、眉を尖らせて振り返った。



「俺、今あいつに会いに行かないともう二度と会えなくなる。あいつにフラれて何もかも失いそうになってんのに、このまま黙ってアメリカに行けるかよ…」

「お前の気持ちもわかるけど、今彼女の元に向かったら彼女自身にも迷惑がかかるだろ」


「学校や彼女に迷惑かける以前に、自分の一生を左右するほどの大事な話をしなきゃいけない時だってあるだろ」



セイは焦っていた。
無理をしてでも紗南に会いに行かないと、もう二度と会えなくなってしまうと思ったから。

泣いても笑っても、今この瞬間でしか自分の気持ちを救う道はない。