「う………そ……だろ。どうして冴木さんが」



セイは素直に受け入れられない。
家族と同様、絶大な信頼を寄せている冴木が、まさか今回の件に携わっているとは⋯。



「原因はお前だろ?お前がこれ以上トラブルを起こさないように、冴木さんは紗南に直談判しに行ったんだろ」

「冴木さんが紗南に直談判を?それで、あいつは俺に別れたいだなんて。…………なぁ、冴木さんが紗南に会いに行った日って、いつ頃だよ」


「そんなの知ったこっちゃねーよ」



ジュンは冴木に手は貸したものの、一方的に問い続けられて気分が害され、襟元を掴んでいるセイの手を振り払った。



心の天気は曇りのち雷雨。
怒りと悲しみの狭間で心が錯乱している。



しかし、視聴覚室の一件が冴木の仕業だと知ると、紗南の気持ち1つで別れ話に発展した訳じゃないと思い始めた。

それと同時に、校門を出たばかりの今なら、まだ全てが間に合うんじゃないかと⋯。



前髪がふと風に靡くと、まるでスタートを意味するかのように気持ちが揺れ動いた。



「俺、あいつんトコ行かなきゃ」

「セイっ……!」



浴びていた向かい風が追い風に逆転した瞬間……。

紗南が流していた涙の理由にようやく届いたような気がした。