「そうね。でも、あの子は人というよりうちの会社の商品なの。これはビジネス。市場価値が下がれば手元に置いておいても意味がないの」

「…そんな。」


「芸能界はそんなに甘くない。小さなかすり傷が致命傷になる場合もある。私達はこれが商売だから、貴方の方が理解してね」

「じゃあ、市場価値が下がったらセイくんはどうなっちゃうんですか?まさか、簡単に切り捨てたりしないですよね。幼少期から人一倍頑張ってここまで上り詰めてきたのに…」



紗南はビルの非常階段で1人で歌の練習をしていた小学生の頃のセイの姿を思い描くと、不安の色が隠せなくなった。



「敢えて返事はしないわ。ちなみに、仲間のジュンも巻き添いを食らう事を忘れないでね」



冴木は紗南の気持ちなど御構いなしにそう告げると、髪を揺らし静かに立ち去った。