セイはおよそ2週間ぶりの紗南を目にすると、信じられない気持ちで胸いっぱいに。
会いたくても会えなかった分、自然と顔がほころぶ。




最近はテレビの街頭インタビュー映像を見て、好きな時に好きなだけ会えるカップルをとても羨ましく思っていた。


街中で恋人と一緒に笑ってる姿も、今の自分には夢のまた夢。
目が回りそうなほどの忙しさに阻まれ、なかなか思い通りに会えない自分。

まるで籠の中の鳥のような自分の元に、紗南という天使が舞い降りてきた。





嬉しかった。
出国前日の今日というチャンスを逃したら、次はいつ会えるかわからなかったから。


紗南が今そこにいると思うだけで心に平和が訪れる。



「セイくん、久しぶり」



音信不通だったにも関わらず、紗南は何事もなかったかのような冷静な口調で言う。
セイは嬉しい気持ちが先走っていたせいか、僅かな変化に気付かないでいた。



「どうして視聴覚室に?」



セイの声は自然と弾む。



「………あっ、うん。2人で話がしたかったから視聴覚室に呼び出してもらったの。私は西校舎に入る事が出来ないから」

「紗南はジュンと知り合いじゃないだろ?一体どうやってジュンとコンタクトを取ったの?」


「………」



セイの問いに紗南は無言を貫く。
次第に表情は崩れ始め、口元を震わせながら無理に微笑む。



紗南の様子がおかしいのは一目瞭然だった。

しかし、自分には願ってもないチャンスが舞い込んできたからこそ、この一瞬を無駄にはしたくない。