「生放送が終わったから2人はもうすぐ建物から出てくるわ。私達も外へ出て裏口に回りましょう」
冴木は紗南の返事を待たぬまま、隣の椅子に置いていた鞄と伝票を持ってレジへ向かった。
紗南は焦って荷物を鷲掴みにして後を追う。
「自分のお代は自分で払います」
紗南は鞄をガバッと開いてガサゴソと漁る。
「いいのよ。私が勝手に連れて来ただけだから」
冴木は会計を終えてレシートを受け取ると、1階に下るエスカレーターの方へと進んだ。
紗南は遅れぬよう後を追う。
向かいのビルの裏口に回ると、先回りしていた女性達がそわそわしながら2人の登場を待っていた。
紗南は間近でKGKのファンを瞳に映す。
この場にいる女性達が、自分と同じようにセイに想いを寄せていると思うだけで怖気付いた。
しかも、ライバルは1人2人どころか今や全国規模。
自分はこの場にいる女性達と比較しても、容姿が優れている訳でもないし、飛び出た才能を持ってる訳でもない。