「今日は何時から仕事に行くの?」
「んー、今から30分後くらいに学校を出る。後で杉田先生が声をかけてくれるよ」
落胆するあまり、紗南からは生まれたばかりの笑顔が消えていった。
彼と会える時間は極端に短い。
保健室に到着してからはまだ5分足らずなのに、彼はあと30分以内にここを去ってしまう。
寂しい。
今この瞬間に会話が繋がったばかりなのに……。
「相変わらず忙しいね。まだ会ったばかりなのに、もうすぐでお別れなんて」
「またすぐに会えるよ。保健室でな」
卑屈になった自分に期待を持たすような返事が届けられるけど、今の自分には満足いかない。
思わずため息が漏れる。
ーーそう、これが現実。
芸能人はスキャンダルがご法度。
堂々とデート出来ないどころか我慢が強いられる。
だから、この先もデートといえるデートは、この保健室以外考えられない。