私が一歩踏み出せたのは、隣に里菜ちゃんがいるから。


「なんだか嬉しそうだね、乙葉。そんなに織田に会えるのが嬉しい?」

その問いかけに首を横へと振った。

(違うよ。これは里菜ちゃんが友達で私は幸せだっていう笑顔。)


……って、そんなの伝わらないよね。

感謝の気持ちは今度改めて手紙にしよう。



そうこうしてると、1組の教室がある階へと到着した。

廊下ではしゃぐ生徒達は同級生だというのに、まるで先輩の教室前を通るかのような緊張感がある。


1組と書かれたプレートが近づくにつれ、鼓動がドクンドクンと大きな音をたて始めた。


そして、1組の前へ到着すると里菜ちゃんがポンっと私の背中を叩く。

歩くスピードはさっきよりも明らかに遅い。

廊下にはいないから、教室の中かな?そう思い視線を教室の方へと移すも、目に映るのは知らない人ばかり。

(織田くんいないのかな?他のクラスに遊びに行ってるのかも)

そう諦めかけたとき、教室の前方で楽しそうに笑う織田くんの姿を見つけた。


(いた……!)


隣にいるのはあの日、保健室の窓から声をかけてきたミヤくんと幸太郎くんだろう。

楽しそうに話す輪の中には女の子もいる。


そのうちの一人は「やっぱりバカだね、織田は」と言うと可愛らしい笑顔を浮かべた。

(なんだか遠いな……。いつもはあんなに近くにいるのに)


保健室から一歩出ると、私と織田くんの世界はこうも違うんだ。


そんな現実を突きつけられたようだった。