…そうやって、いきなり驚かさないでいただきたい。

彼の容姿はかなり中性的ではあるものの、男である事に変わりはないのだから。

目を大きく見開いて身体を仰け反らせた態勢のまま、用意していた答えを紡ぐ。


「もちろん。健康重視だから10時に寝ました」

「今日起きたのは?」

「6時。健康的でしょう?」


晴れ晴れとした顔を見せつけると、確かに…、と、朔は腑に落ちないように肩まで伸びた長い髪を掻いた。



もちろん、自分の健康の為に早寝早起きをしたなんていうのは真っ赤な嘘。

昨夜は、夕飯の時に父と母が言い争いになったから自分の部屋へ逃げ帰ったものの、そこから再度リビングへ降りる勇気が出ずにベッドの上で悶々としていたら、いつの間にか眠ってしまっていたんだ。


今朝なんて、目覚ましのアラーム音に起こされてすらいない。

何が癪に障ったのか、一階から響いてきた父の怒鳴り声で目が覚めたんだ。

弟も父の声で目覚めてしまったようだったけれど、恐ろしすぎて階下へ向かうこともしなかった。


…あの時、一人で父と対峙していた母の味方に付いておけば良かったな、なんて、今更ながらに後悔している。



「でもさ、やっぱり心配だよ。この間も頭痛そうにしてたし、何か体調おかしいなって思ったりしない?」