「それだけじゃありません!私はすごく助かりました。それに……先輩は覚えてないかもしれませんが、1年前にも保健室で助けてもらったんです」


こんなことを言ったって先輩はきっと覚えていない。

私とは昨日が初対面で、先輩はただテッシュを開けただけ。そう思っている。

となると、私が今差し出しているのは過剰な程のお礼の品。

どうりで受け取ってもらえないわけだ。

先輩の迷惑になる前にもう一度だけお礼を伝えて、さっさとこの場から立ち去ろう。

そう思った時だった。


「ベッドの神様の次は何?ティッシュの神様?」


先輩はそう口にしながら私の持っていた袋に手を伸ばした。

「せっかく用意してくれたみたいだし受け取るよ。ありがとう」

手が、心が、一瞬にして軽くなる。

どうしてだろう?

先輩の表情はいつもと変わらないのに、その目からは温もりを感じる。


「い、いえ!こちらこそありがとうございました。で、では失礼します」


私は最後にもう一度深々と頭を下げて、先輩に背を向けた。

一歩、一歩、歩みを進める度に胸がジーンと熱くなる。


やっぱり私は、岬先輩以上に優しい人なんて知りません。


「……ん?あれっ……」


そういえば岬先輩、さっき“ベッドの神様”って言ってなかった?


聞き間違い?

いや、そんな言葉を聞き間違えるはずがない。


だけど、その言葉は私しか知らないはずじゃ……。

なのに、どうして先輩が?


私がその“答え”を知るのは4時間後。


大好きな先輩の隣で、甘い、甘い、ミルクティーを口にした時───。