「あっ……疾風君、ここだったんだ!」

 そう考えた時、向こうから栞の声が聞こえた。

 走って来たのか、肩で息をしながら大きく深呼吸をしている栞の姿が視界に入る。

 その姿が……不謹慎だけど、可愛いだなんて思ってしまった。

「もうそろそろホームルーム始まっちゃうよ?行こうっ?」

「今行く。」

 俺は栞の言葉にそう返し、栞の隣に着いて歩いた。

 栞は何の気なしににこにこ笑って歩いているけど、こっちは気が気じゃない。

 はぁ……こんなに初心だったのかよ、俺。

 恋愛沙汰には興味ないと思っていたが、ただ単に自分が恋愛初心者なだけだった。

 その事を今やっと理解し、そんな自分に呆れてしまう。

 これじゃ、小心者だって言われても仕方ないよな。

「栞。」

「ん?どうしたの?」

 ……だけどこれからは、そう言われないように精一杯アピールしよう。

 不思議そうに首を傾げている栞に、俺はふっと微笑んだ。

 その瞬間、栞の細い腕を掴んで人気の少ない物陰へと連れて行く。

 栞を壁へと追いやって、壁に手をついた。