「悪趣味な奴。」

「悪趣味で結構だよ、俺は。生き物観察が好きなだけだし。」

 そう言いながら仁宇屋は満足しながら俺に背を向け、歩き出そうとする。

 だけどすぐに振り返ってきて、意味深な笑みを見せた。

「内気すぎもダメだよ。女の子を落としたいなら全力で行かなきゃ。じゃね~。」

 仁宇屋はニッと笑ってから、踵を返してどこかへ行ってしまった。

 その姿が見えなくなって、ほっと安堵の息を吐いてから今の気持ちを言葉に表す。

「余計なお世話だ。」

 あいつにそんな事言われなくたって、自分でどうにかできる。

 だが……的確過ぎるアドバイスを言われたからか、反論する気が起きなかった。

 俺だって、こう見えても焦ってるんだ。

 好きな女に情けない姿を見せるわけにはいかないから、表面上は涼しい顔をしているだけ。

 裏を返せば……仁宇屋の言う通りの、弱い奴だ。

「アピール、か。」

 人と関わるのが苦手な和向だって、あんなに栞に気付かれようと頑張っている。

 もう、これ以上逃げ続けるのは良くない。