でもすぐに新さんに腕を引かれ、また抱きしめられる形になってしまった。

「こうしたら落ち着くんだろ。だったら離れんな。」

「で、でも、新さんに風邪が……。」

 新さんが私のせいで風邪をひいちゃったら、元も子もないと思う。

 だから離れようと一生懸命身をよじってみるけど、事態は全く変わらない。

 うっ……ち、力が強いっ……。

 私と新さんの力の差なんて一目瞭然だから、無謀だと言えば無謀だ。

 ど、どうしたら離してくれるんだろう……?

 抱きしめられるのは好きだけど、新さんに風邪を移したくない。

 そう思って悶々と考えていると、頭上から新さんのこんな呟きが聞こえてきた。

「別に風邪の事なんか気にしなくて良い。それに、神菜になら風邪を移されても良い。」

「そ、それはダメですっ……!」

 何を言い出すのかと思ってたら、そんな事考えてたなんて……!

 風邪を移されて良い人なんかいるはずないのに……やっぱり新さんは不思議な人だ。

 それでも優しい人なのは分かっているから、この温もりを私は離せない。