「神菜。」

 優しいいつもの声色が聞こえてきて、視線が動かせなくなる。

 熱っぽい新さんの視線を交わって、恥ずかしさが上限を超えそう。

 ……ううん、もうとっくに超えてる。

 だけど……視線を逸らしたくないと思うのは、どうしてなの?

「最近お前がいろんな奴に言い寄られていると聞いて、どうにかなりそうだったんだ。」

 新さんはそう話しだして、私を抱きしめる力を強める。

 新さんの声色は苦しそうなもので、振り絞っているような弱気なもの。

 それなのに私は、愛されているのかなと実感してしまえた。

 不謹慎だって分かってはいるけど、これほどまでに新さんが想ってくれてるって事だから。

「神菜が近くにいてくれるだけで幸せだ。少し前までそう割り切っていたのに、我慢ができそうにない。神菜を独占したくて、閉じ込めてしまいたくてたまらない。」

 苦しそうで悲しそうな声色から飛び出してきた言葉は、驚くようなものばかりだった。

 私なんかを独占しても、良い事なんかないのに……。

 そう思いつつ、それでも嬉しい気持ちが溢れ出てきてしまった。