大きな息を繰り返し、嫌な音を立ててうるさく鳴る心臓を抑える。

 ……何で?何で落ち着かないの?

 深呼吸を繰り返しても、いつもみたいに落ち着くことができない。

 頭の中にたくさんの疑問を抱きながら、そのまま深呼吸を繰り返す。

 ……もしかしてだけど、魔力が足りてないのかな。

 不意に最近身の回りで起こっている事を思い出し、自分に当てはめてみる。

 魔力が足りなかったら体調不良になるらしいし、その可能性が高い。

 だとすれば、どうしたらいい……?

 焦って、また呼吸が乱れてきた。

 本当に、まずいかも……。

 でも、そこまで考えた時栞に優しくぎゅっと抱きしめられた。

 いつも俺がするように、包み込むように優しく。

「栞……?」

「こうやってぎゅっとすると、ストレスが減るって言われているんです。……って、勝手にごめんなさいっ。」

 申し訳なさそうに、急いで俺から離れようとした栞。

 ……嫌。

 それがなんとなく嫌で、栞を引き寄せて抱きしめた。

 いつもするような優しい力を抜いたものじゃなくて、ぎゅうっと……栞が逃げないように包み込む。