皐月君はその声に瞬時に気付き、ぱっと手を離して私から離れた。

「先輩、あまり無理しないでくださいね。」

「う、うんっ……。」

 笑顔だけどどこか悲しそうな表情を浮かべた皐月君は、そのまま保健室を後にした。

 静かな音を立てて閉められた扉を見ながら、申し訳ない気持ちに苛まれる。

 私、あんな返ししてよかったのかな……。

 恋愛対象と見れないと言えど、もう少し愛想のある返しができたはずなのに。

 そんな事を思いながらも、私はふっと新さんを無意識のうちになんとなく思い浮かべた。



 その後、保健室である程度休ませてもらってから授業に参加することにした。

 みんなには心配されたけど、顔色が大分良くなっているらしい。

 それに……みんなが心配してくれた事実が、純粋に嬉しかった。

 ぼんやりとそんな考えを巡らせながらも、さっきの事をぼんやりと考えてしまう。

 皐月君の気持ちを知る事ができたのは良かったけど、やっぱり申し訳ない事をしてしまった感が否めない。