その様子から、すぐにある可能性が脳裏に浮かんできた。

 これだけ怒ってほしいと願う姿は、普通は見ない。怒ってほしいなんて、おかしすぎる。

 だから、もしかすると神菜は……。

 ――過去に、何かあったんじゃないか?

 何なのかは分からないが、そう考えつくのが自然な気がしていた。

 昔からの癖となれば、さっきの縋り方も説明がつく。

 確実だとは到底言えないが、それでもこの可能性は納得するのに十分だった。

 微かに体を震わせ、短い声を出しながら泣いている神菜の頭をそっと撫でる。

 ここまで神菜が考える必要なんてないのに、どうしてこうも責任を負おうとするんだろうか。

 一人で抱え込む癖が最近は見られなくなったが、その代わりに自分を追い詰めようとしている。

 そんな事、意味がないじゃないか。

 頼る事も甘える事も大分覚えてきたが、それでもまだダメだ。足りない。

 こう思うのはきっと、俺の独占欲が強すぎるからだろう。

 こんな強引な手を使って部屋に連れてきたくはなかったのに、どうしようもない醜い嫉妬と独占欲で衝動的に行動に移してしまった。