……それなのに、神菜は縋るように俺に言い放った。

「嫌、ですっ……!私は悪い事をしたから、怒ってくれないとっ……!」

 ……何かが、おかしい。

 神菜が言葉を発した途端、俺の直感がそう言っていた。

 ここまでの縋り方は尋常じゃなく、違和感を覚えずにはいられなかった。

 たくさんの涙を溢れさせ、子供みたいに泣きじゃくっている神菜。

 どうしたんだと聞いてやりたかったが、まずは神菜を落ち着かせないといけない。

「怒らない。俺にはお前を怒る事なんてできないし、お前を怒りたくない。大丈夫だ、泣くな。」

「なん、でっ……。」

 意味が分からないと思っているのか、神菜は驚いたように目を見開かせている。

 だがすぐに俺に抱き着き、胸板に顔を埋めた。

 そんな姿も可愛いと思ってしまったが、すぐにその考えを払拭する。

 可愛くて愛おしくて仕方がない。

 それでも今は、神菜の事を考えなければならない事は分かっていた。

 神菜はぎゅっと俺の服を握りしめ、今も縋り付くように抱き着いてきている。