「嫌、ですっ……!私は悪い事をしたから、怒ってくれないとっ……!」

 怒ってくれなんてお願い、私も初めてするから正解なのか分からない。

 だけど悪い事をした子には、お仕置きが必要だから……。

 助けはあったといえ、辛い出来事のほうが多かったから尚更そう思う。

 いつの間にか涙を溢れてきていて、子供みたいに泣きじゃくっている状態。

 ……これじゃあ、いつ“あれ”が発動してもおかしくない。

 なのに新さんは変わらず、抱きしめてくれている。

「怒らない。俺にはお前を怒る事なんてできないし、お前を怒りたくない。大丈夫だ、泣くな。」

「なん、でっ……。」

 もう自分でも、何がしたいのか分からない。

 眼鏡もウィッグも知らぬ間に取れてしまって、収拾なんてつけることができない。

 だけどやっぱり、新さんは何もかもを包んでくれる優しさを持っている。

 新さんは聖人なんじゃないかと、本気で思ってしまう。

 ううん、もしかしたら聖人以上かもしれない。

 私は頭の片隅でそんな事を考えながら、しばらくぎゅっと新さんに抱き着いていた。