若干テンパっている私に新さんは、子供をあやすような声色で言った。

「俺にはお前を怒る権利はない。例え、バレてはいけない事情を知っていても。」

 ……っ。

 確かに、そうかもしれない。

 事情を全て知っているからとはいえ、怒る権利があるかと言われると……ないと思う。

 怒るか怒らないか決めるのも新さん次第だから、私が強要できることじゃないのは分かっていた。

 だけどその新さんの優しさが、辛すぎる。

 怒られる事は嫌だけど、優しく接してくれる事もしんどい。

 あはは……きっと今まで、ずっと怒られて生きてきたからかな。

 昔からずっと何度叩かれても蹴られても、大人しくしていたからかな。

『あんたはあの子たちの傍にいちゃいけないのよっ!』

 もう何回その言葉を言われたのか、数えるのも億劫になっていた。

 言葉の意味は理解しているけど、そんなの辛すぎるよ。

 愛に飢えている私には、耐えられないよ。

 だからこそ……新さんの優しさが、辛いと思ってしまうんだ。

 今まで触れてこれなかったものだから、怒られるよりずっと辛い。