嫌な事があっても新さんといると忘れられるから、きっとそのせいだと思う。

 だけど今の新さんは……凄く不機嫌そう。

 新さんに近付いてみると多少落ち着いた気はするけど、それでもまだ怖い顔をしている。

 そしてその視線の先は、翔葉さんだった。

「新。」

「……何だ。」

 その時、翔葉さんが新さんの名前を呼んだ。

 新さんは不機嫌のままだけど翔葉さんにちゃんと言葉を返し、睨みつけている。

 うっ……こ、怖いっ……。

 魔術師の仕事の時も怖い人はたくさんいたから慣れているけど、新さんのこんな顔は初めて。

 だけどそう思った瞬間、翔葉さんがとんでもない事を口にした。

「俺はこいつの正体を偶然知った。だからこれからは、お前を蹴落とす為に立ち回るからな。」

 しょ、翔葉さんっ……!?

 私のほうを見ながら意味ありげに言ってきた翔葉さんに、驚きを隠せない。

 ま、まさか新さんのいるところでそんな事言っちゃうなんてっ……。

 自分から正直に話して謝ろうと思っていたのに、翔葉さんに先を越されてしまった。