もう少し愛想良くしてくれてもいいのに、どうしてこうも冷たいんだろうか。

 ……いや、理由なんて分かり切っているが。

 それでも俺はふっと笑い、挑発するように新を見据えた。

「俺はこいつの正体を偶然知った。だからこれからは、お前を蹴落とす為に立ち回るからな。」

 口角を上げたままそう告げると、新は瞬時に顔を曇らせた。

 その表情に、どうしてか違和感を感じる。

 俺がこれまでいくら挑発しても相手にしてこなかったのに、今の新は真に受けているように見える。

 まさかとは思うが、自信がないとか言わないだろうな。

 ここまで不安そうな顔をしている新を見るのが初めてで、そんな考えが脳裏をよぎる。

 元宮神菜を取られないかと心配しているのか、危機感を持っているのかは分からないが……好都合だ。

「これからは俺も本気で行かせてもらう。新、うかうかしてると奪うからな。」

 吐き捨てるようにそう言い、俺は新たちに背を向け寮のほうへと歩いた。

 本当なら送迎も俺がしたいところだが、そんな事すれば本気で新に殺される。