私の頬を撫で、愛おしそうに見つめてくる天さん。

 こ、これはどういう状況でっ……!?

「あのー……天さん?離していただけると、助かるんですが……」

「うるさい。静かにしといて。」

 恐る恐る訴えようと口を開くと、乱暴な口調の天さんがそう言ってきた。

 て、天さんって、二重人格なのっ……?

 そう思うほど落差が激しく、獲物を見つけた狼みたいな瞳を向けてきている。

「せっかく神菜がこんな近くにいるのに、早々に離すわけないじゃん。俺も神菜に会いたかったんだから。」

 よ、よく聞くと一人称も変わってるっ……!?

 紳士的な僕ではなく、男の人だと意識させられるような俺。

 この状況、多分危険だよね……。

 私の心の中のセンサーが危険だと言っており、強引に天さんから離れる。

 一瞬の隙を突けたからか、案外あっさりと逃げることができた。

「神菜、逃げないでよ。俺、変な事しないから。ね?」

 天さんはそう言って、同意を求めるように首を傾げている。

 ……か、可愛く見えてしまうっ。