「と、とりあえず眼鏡返してくださいっ……!」

 だけどさっき天さんに眼鏡を取られてしまったから、取り返さなくちゃ……!

 誰もここに来ないとはいえ、いつ何が起こるか分からない。

 これ以上警戒を怠るわけにもいかないから、取られたままじゃダメなんだ。

 訴えるように切実にそうお願いすると、天さんはパチンと指を鳴らした。

 えっ……ちょっと待って……!

「会長室に来てくれるならこれも返してあげる。だから早く、僕のところに来てよ。」

「……わ、分かりました。」

 私の訴えに天さんはあろうことか、私のウィッグも魔術で剥がしてしまった。

 その速さが異常すぎて、保守魔術をかける暇もなかったからあっけなく取られる。

 そのせいでもうほとんど、本来の姿に戻ってしまった。

 こ、この人には勝ち目はないかもしれない……。

 私はついに諦めてしまい、大人しく天さんの言う事を聞くことにした。