こ、これで逃げることができればっ……!

 良い考えが浮かんできた……!と思いつつ、ドアノブへと手を持っていく。

「ふふっ、逃げちゃダメだって。」

 だけどあっけなく……天さんに腕を掴まれてしまった。

 その力が思ったよりも強く、振りほどこうとしてもびくともしない。

 そ、そうだった……。この人も結構、勘が鋭い人だった……。

 改めて考えてみると、私に勝ち目がないような気がして一気に大人しくなる。

 だけどどうして、私だけ連絡を入れてくれなかったのか……教えてほしい。

「天さん、どうして私だけなんですか……?」

 天さんの考えることなんて、私には全く分からない。

 それでも聞かないと、このモヤモヤっとした気持ちはきっと晴れない。

 半ば言い聞かせるような形で心の中で反芻し、天さんのほうを向く。

 その途端、天さんの不敵すぎる笑みが視界に飛び込んできた。

「嫌な予感は感じ取ってるはずなのに、どうして逃げないのかな。……神菜。」

「やっぱり……知ってたんですね。」