幸いな事に周りには誰もいなかったけど……。

「ど、どうしてキスなんかっ……!」

「好きな奴がこうやって手に入る距離にいるんだから仕方ないだろ。強引だって思ってはいるが。」

 平然と、さらりと言ってしまった新さんにぷくーっと頬を膨らませてみせる。

 ご、強引だって分かってるならやめてくださいっ……!

 恥ずかしさとキャパオーバーでどうにかなりそうなのに、更に追い打ちをかけられてしまって混乱する。

「悪かったな。これからは気を付ける。」

 新さんはそう言ってくれたけど、絶対に悪かったとか思ってない……。

 だって面白そうに微笑んでいるし、この状況を楽しんでいるようにも見える。

 い、意地悪新さんだっ……!

 心の中でそう思いながら、新さんに家まで送ってもらった。



「はぁ……。」

 新さんと別れて、自分の部屋の中に入る。

 制服のままベッドにダイブし、意味もなくため息を吐く。

『お前のことが好きだ、神菜。』

 さっきの新さんの言葉を不意に思い出し、何とも言えない恥ずかしさに襲われる。