さっきの久瀬先輩の件だって、そうだ。
口ではキツいことを言うけれど、裏を返せばきちんと私の悪いところを指摘してくれてるわけで…。
お弁当にしても、全部完食してくれたしね。
ふふ。本当、充希くんって分かりづらいけど優しいな。
「…ありがとう。充希くんにそう言ってもらえると自信つくなぁ。あ!和音さん、来週の何日に退院かな?できたら、迎えに行きたいし、その日は退院祝いしないとだね」
「…そうだね」
フッと、私に向かって微笑む充希くんがいつもより少しだけ大人びて見えた。
その瞬間。
「…季里」
ドキッ。
「…え?は、はい」
はじめて充希くんから“季里”と、名前で呼ばれ戸惑いを隠せない私は反射的に返事をしたものの、声が少しだけ上ずってしまう。
…ど、どうしたんだろう。急に…いつもは、“ねぇ”とか、“あんた”とかなのに…。
「…って、今度からは呼ぶことにする。いつまでもあんたじゃ良くないでしょ」
あ、そういうことね。