「あっ、わ、私は、竹中 依里です。22歳で大学生です」 「大学生かぁ、22歳ってことはもうすぐ卒業するの?」 「はい、もう就職先も決まってて…」 「それはよかった。何系の会社なの?」 「建設会社です。私は事務ですけど、奇跡的に大手に受かりまして」 「へぇ、そうなんだ。じゃあ安心だね」 自分のことのように新堂さんは嬉しそうに笑う。 俯いていた私は知らなかった、新堂さんが瞳に仄暗い闇を宿していることを。