地主の家に残った二人が自分の話をしている事をつゆ知らず、エルモは村を出て近くの街まで歩いた。

「けっこう、賑わっているわ」

 街の入り口から入るとなかは食べ物屋も多く立ち並んでいて、多くの人とすれちがった。
 この街には王都から派遣された、簡易の冒険者ギルドがあるみたいで、すれ違う人達の中には冒険者の姿もあった。

(この街なら、働く場所がありそう?)

 まだ、のんびりと過ごす事はできなさそうだけど、それは仕方がない。活気がある街の中を食べ物屋がいいと、やすみながら探して回り。
 バイト募集をしているパン屋と大きな食堂、酒場みつけた。
 
(できれば、住み込みで働きたいから昼間はパン屋か食堂で働いて、夜は酒場かな?)


 だけど、パン屋と食堂はお昼を過ぎには閉店していた。
 目的の酒場は夕方前にお店が開き、中ではお酒を飲む人たちで賑わっている。

 店の様子をエルモは外から覗くと――店の中には冒険者なのだろうか? 大柄な男たちが大声で楽しそうに、冒険の話をしながら酒を楽しむ姿が見えた。

 この店の制服見た目はかわいいけど。
 胸が強調されてるし……スカートの丈も短い。

「あの服、私にも着れるかしら?」

 胸は多少なりあるから着られないこともない。
 舞踏会のドレスだって、同じ様なデザインものもあったから抵抗なく着られるわ――それに前世、居酒屋でアルバイトしたこどあるし。

 ――もうちょっと、店の中が見えないかな?

「おい!」

「ひゃぁ……」

「若い女性がこんな所にいると、悪い男に連れて行かれるぞ!」

 男性に声をかけられて振り向くと、黒いローブ姿のグルがいた。酒場に来たということはグルも、ここにお酒を飲みにきた。

 なら、いいところにきたわ。

 グルに頼んで一緒に入ればもう少し、酒場の中の様子が見られる、と思ったのだけど。彼はエルモの腕を掴み、酒場からはどんどん離れて、街の外にまで出てしまう。

(あれれっ?)

「酒場にお酒を飲みに来たのではないのですか?」

「俺は酒場で酒は飲まない。気性の荒い冒険者もいる、こんな男達ばかりのところに女性が一人でいると危ない。とっとと家に帰るぞ」

「う、うん」


 ――もしかして、私を心配で迎えに来てくれたの?