「先生、すごくおいしいです」


 笑顔を見せる私を見て、先生も胸を撫で下ろしてるに違いない。

 あまり喜怒哀楽が無く、顔の表情が変わらないけどきっとそうだろう。


 カフェオレを飲む姿を見つめてくる先生に、私は話しかける。


「何も聞かないんですね……」


「美優くんは、面白いことを言うんだね」


「私が面白いことを、ですか……」


 口を開いた先生が、私に向かって面白いという。

 たくさん泣いて顔は腫れ、学校の制服姿のまま夜遅い時間に押し掛けた女子高生が面白いの?


「ついさっきまで、僕と美優くんは一緒だったじゃないか」


「そう言われれば、おっしゃるとおりです……」


 学校帰り、放課後は先生の所に寄る事が多いけど、最近は毎日のように足を向けてる。

 帰宅して一時間ぐらいしかたってないのに、こんな姿で戻ってきたら先生じゃなくても頭を傾げてしまう。


 両親が転勤で家を長期不在にしてることは先生も知っている。

 弟と二人で生活しながら学校に通ってることも報告済み。

 姉弟の口喧嘩で家を飛び出してきたのだろうと、言わなくても見破られてるような雰囲気。


 気心の知れた先生でも、姉の私が弟に告白して振られたとまでは予想できてないはず。



 傷心で先生の所に泣きついてきたなんて、絶対に言えないよ……