どうやら、教室は針の筵でしかなさそうだ。

かといって、帰宅するわけにもいかない。

こんな時、一体何処へ行けばいいのだろう。

1階の廊下を歩いていると、保健室の前では、

「熱なんかないでしょう。早く教室に戻りなさい!」

そう叱りつける養護教諭と、

「えー、だって、しんどいんですけど」

すがりつく男子生徒。

「じゃあ、親御さんに電話して迎えに来てもらう?」

「それはダメ!」

「だったら、もう教室に戻るの!」

保健室の戸がピシャリと閉まる。

「おいおい、サボろうとしても無駄だぜー?」

廊下を歩いてきた別の男子生徒が、保健室から追い出された生徒に言う。

「ホント、松本先生きっついよな。サボりはすぐにバレるし、ちょっと体調悪いぐらいじゃ、絶対に休ませてくれないし」

松本先生とは、新任の養護教諭のことだ。

「でも、よく見ると美人じゃね?」

「それはある。一度お願いしてぇなぁ」

「お前さぁ、その目的で行ったのかよ!?」

下卑た笑い声を立てて、二人は去っていった。


やはり、特進と体育コース以外は、こんなクズみたいな生徒しかいないのか…。

再び心の中で毒づくが、僕もこいつらと同じところに堕ちてしまったのかと思うと、学校に通う意味どころか、もはや生きる意味すら全くわからない。

だから、あんなことまでも…。