一期一会。−1−

「何ごちゃごちゃ話してんの?
 つーか、その子離せよ、雑魚」

笑顔から一転真顔になり、冷ややかな
表情に切り替わる。

おー、怖っ。

流石、“凍華”の名の通り。

「何だとてめぇ!」

「殺されてぇのか!」

怠そうに毒を吐く彼にいとも簡単に
煽られた男達は顔を真っ赤にしてわめく。

負け犬の遠吠えかな?

人質である私は、内心反応に困っていた。

こういう時って、どうリアクションすれば
正解なの?

野次は飛ばせないし、かといって、
怖がってるフリもなんか違う気がする。

私の演技力ほんと、ゴミだからね…。

ここは、中学生女子らしく震えている
べきなのかもしれないけど。

この前、この人にサクッと嘘だとバレたし
正直リトライは辛すぎる。

しかも、私が『助けてっ、こわ~い!』
なんてぶりっ子してるところを見て
誰に得があるっていうんだ。

気持ち悪すぎて想像したくもない!

真面目に一生涯の黒歴史になると思う。