確かに、氷室さんだけ呼び捨てじゃない
って、なんか変だね。

拗ねてるらしい氷室さん…いや、葵が、何でか愛おしくて、フッと笑みが溢れた。

『葵』

一番、とびきりの笑顔になってたらいいな。

私、葵に出会えて良かった。

葵と出会わなかったら、きっと、
今こうして笑うこともできなかっただろう
から。

傷つけられもしたけど。

私、やっぱり、貴方といたい。

「彩羽」

ちゃん付けを止めて、はっきりと名前を
呼んだ葵の顔は真っ赤。

…まぁ、それを言うなら、私も負けてない
かもしれないけれど。

微笑みあえる今が、とっても幸せだ。

「ちょっと〜、彩羽ちゃん独り占め
 しないでよ」

「葵、ウザい」

「イチャイチャは他所でやってくれ」

やんややんや、と邪魔してくる皆に
私と葵は仕方なく笑って、目を見合わせる。

まだ、この感情が何だか知らない。

でも、確実に膨らみ、実っていた。

まだまだ物語は始まったばかりで、
皆とは長い付き合いになる。

私は、これから起こる全てを、皆と一緒に
藻掻いて足掻いて乗り越えていく。

胸に秘めた、恋の果実を抱えて。