“王蝶”のことを探してて、あの男が
もしも私がそうだと知っているのなら。

…そう思うと、ゾッとしてしまうから。

ソウ君に促されて車に乗り込むと、
ボイスチェンジャーを外す。

…私、やっぱり狙われてるんだ。 

王蝶のことは有名だとは知っていたけど、
本気で探す人まで現れるなんて予想でき
なかった。

勝手に安心してた自分は馬鹿に違いない。

中学生な上に、こんな派手なことをして、
警察にでも目をつけられたらおしまいだ。

少年院とか、死んでも嫌だよ。

…ましてや、またあの施設に戻ることなんて
もっと、嫌。

私に、ソウ君以外の居場所はないんだ。

ボーッと窓の外を眺めながら、
グルグルと嫌な想像をしていたら、
ソウ君は大袈裟に笑う。

「そんな怯えんなよ!

 仮にバレたとしても俺が守ってやるから」

ソウ君は、いつも、私に安心をくれる。

だから、堂々と立っていられる。

『…うん』

“王蝶”としての活動は、私の正体が
明かされるまで続けるつもりでいる。